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不動産売買でよく聞く買付証明書(買付申込書)って何?

2025.12.20
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「この物件、気に入ったから購入したい!」

そう思って不動産会社に相談すると、必ず出てくるのが「買付証明書」という書類です。

「とりあえず出しておけばいいんですよね?」

そんな軽い気持ちで提出してしまうと、後々トラブルになることも。

 

実は、買付証明書には法的な拘束力はありません。

でも、だからといって安易に提出したり、すぐにキャンセルしたりすると、将来の不動産取引で不利になる可能性があるんです。

この記事では買付証明書の正しい理解と、失敗しないための注意点を詳しく解説します。

買付証明書(買付申込書)とは?不動産購入の第一歩

買付証明書は「買付申込書」「購入申込書」とも呼ばれます。

購入希望者が売主に対して「この条件でこの物件を購入したい」という意思を正式に伝えるための書面です。

 

不動産取引では慣行的に使用されている重要な書類で、これを提出することで、単なる「見学しただけ」の段階から、具体的な条件交渉のステージへと進みます。

「この物件が欲しい」という気持ちを、口頭ではなく書面で示すことが、売買交渉の第一歩となるわけです。

 

 

 

買付証明書の3つの役割を理解しよう

買付証明書を提出すると、どんな意味があるのでしょうか。

ここでは、買付証明書が持つ3つの重要な役割について解説します。

売主への具体的な購入条件の提示

買付証明書の最も基本的な役割は、買主の希望条件を売主に明確に伝えることです。

購入希望価格、支払い方法、引渡し条件などを書面で提示します。

 

これにより、売主側も「この買主はどんな条件を希望しているのか」を正確に把握でき、交渉がスムーズに進みやすくなります。

曖昧な口頭でのやり取りではなく、書面で条件を明示することで、売買契約締結に向けた本格的な交渉がスタートするのです。

実務上の「一番手」としての交渉優先権

買付証明書を提出すると、実務上はその時点での「一番手」として交渉の優先権を得たというニュアンスになります。

不動産会社は、買付証明書が提出された後、他の購入希望者に対して「現在、交渉優先権を持つお客様がいます」と案内することが一般的です。

 

これが、不動産ポータルサイトで見かける「申込有」や「商談中」といったステータス表示につながります。

ただし、これはあくまで実務上の慣行であり、法的に保証された権利ではない点に注意が必要です。

実務上の優先権を得ることで、他の購入希望者に先を越される心配を減らせます。

法的拘束力がない意思表示である理由

「買付証明書を出したら、もう契約したことになるんですか?」

よくこんな質問をいただきますが、答えは「いいえ」です。

買付証明書は、あくまで「購入したい」という意思表示であり、これ自体には法的な拘束力がありません

 

不動産の売買契約が正式に成立するのは、買主と売主が「売買契約書」に署名・押印し、「手付金」が支払われた時点です(民法)。

そのため、売買契約締結前であれば、買主は原則として違約金を支払うことなく、買付証明書を取り下げることができます。

 

とはいえ、後述するように、安易なキャンセルは信用問題につながるため、慎重な判断が必要です。

法的拘束力がないからといって、軽く考えてはいけないのが買付証明書なのです。

 

 

 

買付証明書に記載される項目

買付証明書には、売主が買主の信頼性や購入の条件を判断するために必要な情報が記載されます。

ここでは、一般的に記載される主な項目を5つ紹介します。

購入希望価格

買主が希望する購入金額を記載します。

これは売主への交渉の出発点となる重要な項目です。

売主の希望売却価格に対して、そのまま満額で提示するケースもあれば、市場相場や物件の状態を考慮して減額した価格を提示するケースもあります。

 

ただし、あまりに低い価格を提示すると、売主から交渉を断られる可能性もあるため、バランスが重要です。

購入希望価格は、その後の価格の基準となります。

支払い条件(現金・融資)

現金一括で購入するのか、住宅ローンを利用するのかといった支払い方法を明記します。

住宅ローンを利用する場合は、融資特約(ローンが組めなかった場合の契約解除の特約)の有無を記載することが一般的です。

 

一方、住宅ローン利用の場合でも、事前審査を通過していることを示せば、信頼性を高めることができます。

売買契約時の手付金予定額

売買契約時に支払う手付金の希望額を記載します。

一般的に、手付金は売買価格の5~10%程度が相場とされています。

手付金の額が多いほど、買主の購入意思が強いと判断され、売主からの信頼を得やすくなります。

 

ただし、手付金は売買契約が成立した後、買主都合で解約する場合には放棄することになるため(手付解除)、無理のない金額設定が大切です。

手付金の額は、購入意思の本気度を示すバロメーターとなります。

【手付金とは?その役割と手付解除の仕組み】

買主情報とその他の条件

売主が買主の信頼性を判断するために、氏名、住所、連絡先などの基本情報を記載します。

 

また、上記項目以外にも買主の希望条件を記載することがあります。

例えば、「残置物の撤去を売主負担で行ってほしい」「リフォーム費用を考慮して価格交渉したい」「引渡し時期を早めてほしい」といった、個別の要望を盛り込むケースもあります。

 

ただし、あまりに細かい条件を並べすぎると、売主から敬遠される可能性もあるため、本当に重要な条件に絞ることが大切です。

買主の基本情報と必要な条件を明確に示すことで、スムーズな交渉につながります。

 

 

 

【買主向け】買付証明書を提出する前の注意点

買付証明書には法的拘束力がないとはいえ、提出には慎重さが求められます。

ここでは、買主が失敗しないために知っておくべき3つの注意点を解説します。

安易な提出がもたらす信用リスク

「法的拘束力がないなら、とりあえず出しておこう」

そんな軽い気持ちで買付証明書を提出するのは危険です。

 

複数の物件に同時に提出したり、すぐにキャンセルを繰り返したりすると、仲介している不動産会社や売主からの信用を失います。

不動産業界は意外と狭い世界で、一度信用を失うと、「この人は本気で買う気がない」と判断され、今後の物件紹介や交渉で不利な扱いを受ける可能性があります。

 

買付証明書は、本当にその物件を購入する意思がある場合にのみ提出するという姿勢が大切です。

信用は一度失うと取り戻すのが難しいため、慎重な判断が求められます。

提出後の条件変更が難しい理由

買付証明書を提出した後に、「やっぱり価格をもっと下げてほしい」「支払い条件を変更したい」といった、買主にとって都合の良い条件変更を一方的に行うと、トラブルの原因となります。

売主や不動産業者は、提出された条件を前提に交渉を進めているため、後から条件を変更されると不信感を抱きます。

 

その結果、交渉が不利になったり、最悪の場合は交渉自体が打ち切られたりする可能性もあります。

買付証明書に記載する条件は、提出前に十分に検討し、変更の必要がない内容にしておくことが重要です。

一度提出したら、基本的には条件変更ができないと考えておくべきです。

損害賠償請求のリスクとは

買付証明書の提出後、交渉が進んで売主が契約準備のために費用を支出した段階で、買主が不当な理由で一方的に交渉を打ち切った場合、どうなるでしょうか。

非常に稀なケースですが、「契約締結上の過失」として損害賠償責任を問われる可能性もゼロではありません(民法)。

 

例えば、売主が買主のために物件の改修工事を始めていたり、他の購入希望者との交渉を断っていたりした場合、買主の一方的なキャンセルにより売主に具体的な損害が発生することがあります。

 

このような場合、信義則(民法第1条)に基づいて、損害賠償を求められる可能性があります。

法的拘束力がないからといって、何でも許されるわけではないことを理解しておきましょう。

 

 

 

【売主向け】買付証明書を受け取った際の対応ポイント

ここからは、売主側の視点で、買付証明書を受け取った際にどう対応すべきかを解説します。

法的効力がないことの正しい理解

買付証明書を受け取ると、「これで売却が決まった!」と安心してしまいがちです。

しかし、買付証明書はあくまで「申込」であり、提出されたからといって売却が確定したわけではありません。

売買契約書への署名・押印と手付金の授受が完了するまでは、正式な契約は成立していません。

【売買契約書の確認事項】

 

そのため、買付証明書が提出された後でも、より良い条件を提示した別の買主が現れた場合、売主は自由に交渉相手を選ぶ権利があります。

ただし、後述する「売渡承諾書」を発行してしまうと、事実上の拘束力が生じるため、慎重な判断が必要です。

買付証明書だけでは、まだ安心できないことを覚えておきましょう。

買主の資金調達能力の見極め方

買付証明書が複数届いた場合、どの買主と交渉を進めるべきでしょうか。

単に価格が高いだけでなく、買主の資金調達の確実性を見極めることが重要です。

現金一括購入の買主は、住宅ローンの審査落ちのリスクがないため、取引の確実性が高いと言えます。

 

一方、住宅ローンを利用する買主でも、事前審査を通過していたり、頭金を多く用意していたりする場合は、信頼性が高まります。

 

また、引渡し条件も重要な判断材料です。

売主の希望する引渡し時期に柔軟に対応できる買主の方が、スムーズな取引につながります。

価格だけでなく、総合的に判断することで、安心して取引できる買主を選びましょう。

売渡承諾書を発行する際の注意点

買付証明書に対して、売主が条件を受け入れる意思を示す書類を「売渡承諾書」と呼びます。

売渡承諾書も、法的には拘束力がありません。

 

しかし、承諾書を発行すると、事実上は他の買主との交渉を断らなければならなくなるため、慎重な判断が必要です

承諾書を発行した後に、より好条件の買主が現れたからといって交渉相手を変更すると、最初の買主から「話が違う」とトラブルになる可能性があります。

 

また、不動産会社からの信用も損なわれます。

売渡承諾書を発行する前に、買主の条件や信頼性を十分に確認し、本当にこの買主で問題ないかを慎重に検討しましょう。

よくある質問

Q. 買付証明書を提出した後、他の物件が気になった場合はどうすればいいですか?

A. 売買契約を締結していない段階であれば、法律上はキャンセルが可能です。

 

ただし、前述の通り、頻繁なキャンセルは信用を失う原因となります。

もし本当に他の物件の方が魅力的だと感じた場合は、できるだけ早く不動産会社に連絡し、正直に状況を説明することが大切です。

誠実な対応を心がければ、理解を得られることもあります。

Q. 買付証明書を複数の人が同時に提出した場合、どうやって決まるのですか?

A. 基本的には、売主が最も条件の良い買主を選ぶことになります。

 

価格が高い、現金一括購入、引渡し時期の融通が利くなど、総合的に判断されます。

また、実務上は「先着順」を優先する売主もいますが、法的な義務ではないため、後から来た買主の方が条件が良ければ、そちらが選ばれることもあります。

Q. 買付証明書に印鑑は必要ですか?

A. 一般的には、実印ではなく認印で問題ありません。

 

ただし、不動産会社によって取り扱いが異なる場合があるため、事前に確認しておくと安心です。

買付証明書自体に法的拘束力がないため、印鑑の種類が重視されることは少ないですが、書類としての体裁を整えるために押印を求められることもあります。

Q. 売主が個人ではなく不動産会社の場合、買付証明書の扱いは変わりますか?

A. 基本的な役割や法的性質は変わりません。

 

ただし、売主が不動産会社(業者)の場合、個人の売主よりも事務的に手続きが進むことが多く、条件面での交渉が難しい場合もあります。

また、業者売主の場合は、契約不適合責任の取り扱いが異なるため、その点も含めて検討が必要です。

【契約不適合責任とは?売主・買主それぞれの注意点】

Q. 買付証明書の有効期限はありますか?

A. 買付証明書自体に法律で定められた有効期限はありません。

 

ただし、実務上は買主が優先権を確保できる期限や、売買契約の準備にかかる期間を考慮して、一定の期限を設けることが多いです。

期限を設定することで、買主・売主双方が無駄な待ち時間を減らし、スムーズに取引を進めることができます。

 

 

 

まとめ

買付証明書は、不動産購入の意思を売主に伝える重要な書類です。

法的な拘束力はありませんが、一度提出すると実務上の優先権を得られる反面、安易なキャンセルは信用問題につながるため、慎重な判断が求められます。

 

買主にとっては、購入希望価格、支払い条件、手付金の額など、提出前に十分に条件を検討することが失敗しないポイントです。

売主にとっては、買付証明書を受け取っても安心せず、条件を総合的に判断し、売渡承諾書の発行は慎重に行うことが大切です。

 

不動産取引は人生の中でも大きな決断の一つです。

買付証明書の正しい理解を深めることで、スムーズで安心な取引を実現しましょう。

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